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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)5421号 判決

事実

原告(株式会社東京銀行)は、被告(佐藤八平)が原告に宛て振り出し交付した額面三百万円の約束手形を満期に支払場所に呈示したが支払を拒絶されたので、右手形金及びこれに対する完済までの年六分の利息の支払を求めると述べ、被告は、原告主張の手形を原告に対して振り出した事実は認めるが、本件手形については被告に支払能力ができたときに支払えばよいとの合意が当事者に成立して居り、被告は未だ支払能力がないので原告の本訴請求には応じ難いと述べた。

理由

右被告の抗弁は普通銀行の取引に於ては稀有の事例に属するから其の証明は十分の根拠を有するものでなくてはならない。被告本人はその抗弁に副う供述を為し、本件手形が満期を白地で振り出された事実(本件に於ては右満期は適法に補充されている)もこれを認め得るけれども、本件手形金の支払が被告の支払能力を生ずる迄猶予されている旨の供述は被告の誤解若しは勘違いによるものと推測され、証人小菅尚次の証言は間接であり爾余の乙号証も亦被告主張の抗弁を肯定するに足りないから、被告の前示抗弁は失当である。

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